【生物基礎】獲得免疫 免疫の最終防衛ライン!

樹状細胞がヘルパーT細胞に抗原提示し、ヘルパーT細胞はB細胞に抗原提示する。B細胞は抗体産生細胞に分化し、抗体を分泌する。体内環境の維持
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第一防衛ラインである物理的・化学的防御、第二防衛ラインである自然免疫を通過してしまった異物や病原体は、最終防衛ラインである獲得免疫(適応免疫)で排除されます。
なお、獲得免疫は適応免疫とも呼びます。この記事では獲得免疫で呼称を統一します。

物理的・化学的防御についてはこちらの記事をご覧ください。

自然免疫についてはこちらの記事をどうぞ。

獲得免疫とは

獲得免疫は、体内に侵入した異物や病原体に対する特異的な免疫です。自然免疫はある意味手当たり次第に異物や病原体を攻撃していたのに対し、獲得免疫は狙い撃ちにするのが特徴です。自然免疫とは異なり、後天的(生まれた後)に備わる免疫です。

侵入して対処した異物や病原体の情報が記憶されるのも、獲得免疫の特徴です。

獲得免疫には2種類あり、体液性免疫細胞性免疫に分けられます

獲得免疫の主役の細胞

獲得免疫で働く細胞は、リンパ球のヘルパーT細胞、キラーT細胞、B細胞が代表的なものです。T細胞は胸腺(Thymus)、B細胞は骨髄(Bone marrow)で分化します。TとかBとかは、それぞれの分化する器官の頭文字ですね。

体液性免疫では主にB細胞が、細胞性免疫では主にキラーT細胞(とヘルパーT細胞)が活躍します。

また、これらのリンパ球に認識される異物や病原体のことを、特に抗原と呼びます。

ヘルパーT細胞のはたらき

異物や病原体を認識した樹状細胞は、リンパ管を通ってリンパ節へ移動し、そこでヘルパーT細胞抗原提示を行います。「こんな奴がやってきたよ」とヘルパーT細胞に説明する訳ですね。

抗原提示を受けたヘルパーT細胞の一部は、血管を通って感染部位まで移動し、マクロファージや好中球、NK細胞を活性化させることで、自然免疫を活性化させます。

またヘルパーT細胞の一部はリンパ節に残って、B細胞やキラーT細胞にも抗原提示を行います。それによって、B細胞やキラーT細胞を活性化させる役割も持っています。

体液性免疫の流れ

体液性免疫は、B細胞抗体が主役です。B細胞が抗体を産生し、その抗体が異物や病原体に結合して無力化した後、マクロファージなどの食作用によって抗体ごと異物や病原体を排除する、という仕組みです。

B細胞は、抗原を直接感知するか、ヘルパーT細胞による抗原提示によって活性化されます。ヘルパーT細胞は、インターロイキンという物質を分泌し、それをB細胞が受け取ることでB細胞が活性化します。

活性化されたB細胞は増殖し、抗体産生細胞(形質細胞とも)に分化した後、抗体である免疫グロブリンを作り出すようになります。

この抗体は血管を通じて感染個所にまで移動し、組織中で抗原(この場合は異物や病原体)と結合します。この結合は抗原抗体反応と呼ばれます。抗原抗体反応によって、抗原の毒性が失われたり感染力が弱くなったりし、マクロファージなどによる食作用を受けやすくなるようになります。
このように、抗体は自然免疫を活性化する作用があります。

抗体の構造については、こちらの記事をご覧ください。非常にダイナミックな変化を起こす、興味深い構造をしています。

なぜ抗体産生にヘルパーT細胞を経由させるのでしょうか?

ひとつの理由は、ヘルパーT細胞は免疫寛容というトレーニングを受けており、提示された抗原が自己なのか、自己でない異物なのかを判定できる能力を持っています。
樹状細胞がもしも自己の細胞を抗原として提示してしまい、それをそのまま受け入れてしまうと、自己の細胞を攻撃する抗原が産生されてしまいます。
樹状細胞が提示してきた抗原が自己の細胞であればそれを拒否し、樹状細胞が提示してきた抗原が本当に異物であればB細胞に抗体をつくらせる
そのようなダブルチェック機能が働いていると考えられています。

細胞性免疫の流れ

細胞性免疫は、キラーT細胞が主役です。異物である細菌やウイルスなどに感染した細胞は、細菌やウイルスが増殖する温床になってしまいます。そうなってしまった細胞はもはや不要ということで、キラーT細胞が感染した細胞を攻撃し、感染した細胞ごと異物を排除する仕組みです。キラーT細胞は英語でkiller T cellですが、まさに名前の通りです。

樹状細胞から抗原提示されたヘルパーT細胞は、インターロイキンという物質を分泌し、それをキラーT細胞が受け取ることでキラーT細胞が活性化し、増殖します。増殖したキラーT細胞は、血管を通って感染部位まで移動していきます。そして、異物である細菌やウイルスなどの病原体に感染した細胞を攻撃し、破壊します。

B細胞やキラーT細胞は記憶細胞になり保管される

異物や病原体をを認識して活性化したB細胞やキラーT細胞は、一部が免疫記憶細胞として体内に残り、二次応答に寄与します。

せっかく異物や病原体を認識して、そのデータを学んだのですから、その記録をしばらくとっておこうというわけですね。そうしたら、次に同じ異物や病原体がやってきたときに素早く対応することが可能です。

それが次に説明する二次応答です。

二次応答は素早く強力な免疫反応

ある異物や病原体が初めて体内に侵入した時に反応する免疫反応を一時応答と呼びます。それに対して、ある異物や病原体が二回目以降に体内に侵入した時の免疫反応を二次応答といいます。

二次応答では、以前の情報を持っている免疫記憶細胞が体内に残っています。そのため、すぐにキラーT細胞が活性化したり、B細胞が抗原を産生したりすることができます。それによって、速やかで強い免疫反応が起き、素早く異物や病原体を排除することができます。

この仕組みを利用したのがワクチン予防接種ですね。これについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

まとめ

獲得免疫について解説してきました。大きく分けて以下の流れでしたね。

  • 体液性免疫
    樹状細胞からヘルパーT細胞を経由して情報を受け取ったB細胞が、抗体産生細胞となり、抗体を産生して自然免疫を活性化する。
  • 細胞性免疫
    樹状細胞からヘルパーT細胞を経由して情報を受け取ったキラーT細胞が、感染した細胞ごと異物を排除する。
  • 免疫記憶と二次応答
    ⇒情報を受け取ったB細胞キラーT細胞は、免疫記憶細胞として体内に留まる。二回目以降の異物の侵入時には、これらの情報を活かして素早く強い免疫反応(二次応答)を起こす。

免疫システムは、ストーリーが複雑だし登場する細胞も多いしで大変ですよね。正直覚えるのも大変ですが、それもそのはず、この免疫システムだけで一つの学問になるくらいです。地道にコツコツ練習していきましょう。

それでは!

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