今回は小腸でのグルコースの吸収をまとめていきましょう。
膜透過輸送の具体例のひとつであり、能動輸送と受動輸送が連携して吸収を行っています。チャネルやポンプといった輸送担体と絡めて時々出題のネタになるので、一度目を通しておくとよいでしょう。
小腸上皮細胞でのグルコース吸収
食物由来の糖質は、消化を経てグルコースなどの単糖になり小腸へ到達します。
小腸では、グルコースは消化管から小腸上皮細胞を通って血管へと輸送されます。
単糖であるグルコースはエネルギー源として非常に重要なので、小腸上皮細胞にはグルコースの吸収に特化した輸送システムが存在します。
小腸でのグルコース吸収に関わるタンパク質
小腸でのグルコースの吸収には、3つのタンパク質が関与しています。
1つ目は、Na+-K+-ATPアーゼです。ATPのエネルギーを用いて、Na+を細胞外へ、K+を細胞内へ能動輸送するタンパク質です。いわゆるナトリウムポンプですね。
2つ目は、Na+/グルコース共輸送タンパク質と呼ばれるタンパク質です。SGLT1(Sodium-dependent GLucose Transporter)と名前がついています。これは、Na+の濃度勾配を利用してNa+とともにグルコースを輸送するタンパク質です。Na+が輸送されるときに、グルコースも巻き込まれて輸送される、と考えるとわかりやすいでしょう。
3つ目は、GLUTと呼ばれるタンパク質です。これはグルコースの濃度勾配に従ってグルコースを輸送するタンパク質です。グルコースを受動輸送する場所と考えてよいでしょう。
グルコース吸収のメカニズム
グルコースの吸収には、3段階のステップがあります。図の番号①~③と対応させながら読んでみてください。
①細胞内のNa+濃度を低下
Na+-K+-ATPアーゼ(ナトリウムポンプ)が細胞内のNa+を血管へ、血管のK+を細胞内へ能動輸送し、細胞内のNa+濃度を低下させます。
②消化管からのNa+とグルコースの流入
細胞内のNa+濃度が低下している状態ですので、それを補うために消化管内のNa+が細胞内に流入しようとします。その際にSGLT1を通ってくるのですが、その際にグルコースも同時に細胞内に入ってきます。
③細胞内に入ったグルコースが血管へ流出
②により細胞内のグルコース濃度が高くなりました。血管の方向にはグルコースが通過することができるGLUTがあります。血管のグルコース濃度は低い状態ですので、グルコースは濃度勾配に従い、GLUTを通って血管内へと流出していきます。
図にまとめると以下のようになります。
ちなみに、細胞内に流入したK+は、K+チャネルを通って血管へと受動輸送されていきます。これにより、再度①の輸送を起こせるということです。
まとめ
小腸でのグルコースの吸収メカニズムをまとめました。
このメカニズムや登場するタンパク質それ自体は暗記必須ではありません。ただ、メカニズムそのものの流れは理解しておくと役に立つと思います!
同じようなシステムが腎臓にもあり、グルコースの再吸収に使われています。これについてもいずれ解説記事にする予定です。
それでは!