【生物基礎】【高校生物】DNA、染色体、ゲノム、遺伝子…違いがちゃんとわかる解説

遺伝子とその働き
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今回は、遺伝の分野でよく登場するDNAや染色体、ゲノム、遺伝子といった用語について解説していきます。

ちなみに、これらの違い、ちゃんと言えますか

意外とごっちゃになっているこれらの単語、これを機にわかりやすく整理していきましょう。

DNAは「遺伝情報を記録するための物質」

DNAとは、デオキシリボ核酸(DeoxyriboNucleic Acid)という物質の名前です。

DNAは遺伝情報を記録しておくための物質のことですので、よく遺伝子の本体であるといわれたりしますが、DNAはあくまでも物質なので、それそのものに何か意味があるわけではありません。

DNAは、塩基(アデニン、チミン、シトシン、グアニン)と糖(デオキシリボース)とリン酸が結合した、ヌクレオチドという構成単位から成っています。

染色体は「DNAを整理するための物質であり構造」

染色体とは、DNAとヒストンからなる物質です。

もともとは、真核生物の細胞分裂時に観察されるひも状の構造を指す用語でしたが、その構造が詳細に明らかになっていくにつれて、DNAとヒストンと呼ばれるで構成されることが分かってきました。

ちなみに、観察する際に色素で良く染まるので「染色体」という名前になりました。

ヒトのDNAを例にとってみると、その長さは合計で2mにも及びます。それをそのまま細胞の中に格納するのは難しいので、染色体という形に圧縮して保管しているのですね。

というわけで、染色体というのも物質のことであり、DNAを圧縮して保管するための構造であるということです。

ゲノムは「生物が持つ全ての遺伝情報」

ゲノムとは、その生物が持っている全塩基配列のことを指します。言い換えると、ある生物が持つDNAの全情報を纏めてゲノムと呼びます。

ゲノムには、生物を形作るのに必要な情報が記録されています。その中から、必要な時に必要な情報を取り出し、必要なタンパク質を合成するのに使われています。

ヒトにはヒトのゲノム、サルにはサルのゲノム、ショウジョウバエにはショウジョウバエのゲノムがあります。
例えばヒトゲノムに関して言うならば、相同染色体1本ずつ合計22本に加え、性染色体のX,Yも加えた染色体24本分に含まれるDNAの塩基配列すべてということになります。ヒトには約30億塩基対のDNAがありますが、その30億塩基対全てをひっくるめてゲノム、と呼ぶわけです。

気を付けてほしいのは、「1個体が有する塩基配列の全情報」というよりは、「その生物が持ちうる塩基配列の全情報」ということです。そうでなければ、性別によって異なる情報についてはゲノムから漏れてしまいますよね。

ちなみに、ヒトゲノムについてはヒトゲノムプロジェクトと呼ばれる世界中が共同で当たったプロジェクトにより、2003年にすべての配列が解析されました。

ゲノム(genome)は、遺伝子(gene)と染色体(chromosome)から成る造語です。

ゲノムの定義は、遺伝子の研究が進むにつれて変わってきた経緯があります。今回紹介した定義は、現代的なゲノムの定義です。

古典的な定義では、「生殖細胞の持つ染色体のセット」であったり、「相同染色体1本ずつと性染色体を合わせた合計の染色体」であったりします。

高校生物や大学入試では、この古典的なゲノムの定義を基に教科書がかかれたり問題が作られたりもしますので、両方を理解しておいた方が良いでしょう。

遺伝子は「意味があり、タンパク質をつくるための配列」

遺伝子とは、DNA上にある「タンパク質をつくるための情報(アミノ酸の配列)を持つ領域」のことです。

実は、DNA(あるいはゲノム)のすべてがタンパク質についての情報が記録されているわけではなく、特に意味が無いと思われるような部分も沢山あります。

例えばヒトには約21000種類の遺伝子があります。先ほどヒトには30億塩基対のDNAがあるといいましたが、そのうちの1~2%程度がタンパク質のアミノ酸配列を指定している領域になっています。

ちなみに、ヒトゲノムの中には遺伝子としての機能を失っていると思われる偽遺伝子と呼ばれる部分が14000種類、タンパク質をつくらないRNAを転写する部分が23000種類ほど確認されています。これらのようにタンパク質の情報を担わないDNA領域をジャンクDNAと呼んでいました。

これらは無駄な部分という訳ではなく、この部分が変位することで新しい遺伝子となる可能性を秘めている場所になることが最近の研究で分かってきています。

本に例えるとこんな感じ

私が好きな例え方で、本にこれらの用語を例えるというものがあります。

例えば、このような本があるとしましょう。

ほとんど読めないですよね(笑)。ですが、部分的に読めるところがあります。

この一文字一文字がDNA、そのうち読めるところ、つまり意味のあるところが遺伝子で、そこにタンパク質の情報が書き込まれています。他の読めない意味不明なところは、DNAの塩基配列ではあるけれども遺伝子ではないということですね。

そして本が染色体になります。DNAをまとめたものが染色体ですので、本でいうならば、文字を書き込んだページをまとめたものが本ということですね。

更に、この本はシリーズになっています。全23巻で1セット、これが2セットある状態です。ヒトの染色体も23対46本ですね。

そして、この1~22巻およぼX巻とY巻すべてに書いてある情報すべてがゲノムを指します。

まとめ

DNA、染色体、遺伝子、ゲノムの各用語について解説しました。

これらはかなりの確率で誤用されたり意味がごちゃごちゃにされたりしています。しかし生物の問題では、これらの理解ができていない解答を書くとすぐにバレますので気をつけましょう。

それでは!

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