今回はABO式血液型の遺伝問題について解説していきましょう。
通常の対立遺伝子の遺伝とは少しだけ異なるルールがありますので、そこさえ抑えてしまえば問題なく解けると思います!
ABO式血液型の基礎知識はこちらをご覧ください。
例題
まずはこの例題を見てみてください。
ヒトのABO式血液型を決める遺伝子は常染色体上に存在し、メンデルの遺伝法則に従い遺伝する。
下の図は、ある家系の血液型を調査した結果をまとめたものである。
○は女性を、□は男性を表し、番号で個人を区別している。
○や□の中にはABO式血液型を記入しているが、不明な部分は空欄である。
① 2,4,9,16番の人の血液型を推定し、可能性のある血液型を答えよ。
② 1,3,17番の人の遺伝子型を推定せよ。
③ 4番の女性がAB型の男性と結婚した場合、産まれてくる子供の血液型とその可能性を%で答えよ。
血液型の遺伝の問題では、このような家系図の問題がよく出てきます。
図の読み取り方と血液型の遺伝の仕方の両方が問われる問題です。
血液型の遺伝のおさらい
血液型の遺伝は、基本的にはメンデルの遺伝の法則に沿って考えることができますが、ABO式血液型が複対立遺伝子であることに気を付けなければなりません。
複対立遺伝子とは、3種類以上の対立遺伝子により形質が決まる遺伝現象あるいはその遺伝子のことを言います。
ABO式血液型は3つの対立遺伝子(A、B、O)の組み合わせにより決まります。これらは複対立遺伝子で、遺伝子Aと遺伝子Bはどちらも遺伝子Oに対して顕性(優性)です。遺伝子Aと遺伝子Bの間には顕性・潜性(優性・劣勢)の関係はありません。
ABO式血液型の遺伝子型はそれぞれ、
A型は「AA」と「AO」、
B型は「BB」と「BO」、
O型は「OO」、
AB型は「AB」
となります。
A、B、Oの各遺伝子の顕性・潜性(優性・劣勢)関係については暗記する必要がありますが、各血液型の遺伝子型については暗記ではなくて理解しましょう。
例えば遺伝子型「AO」であれば、「顕性遺伝子Aと潜性遺伝子Oを持つ遺伝子型なので、表現型はAになる」ということですね。
血液型がBであれば、「表現型がBになるのは、顕性遺伝子B同士の組み合わせ、または顕性遺伝子Bと潜性遺伝子Oの組み合わせ」ということです。
複対立遺伝子の例としては、アサガオの葉の形やミドリシジミ(チョウの一種)の斑紋の遺伝などがあります。
①と②の解き方
さて、上記の複対立遺伝子としての特徴を抑えた上で、解き方を解説していきます。
家系図の問題については、与えられた条件の中で判明した遺伝子型や表現型をすべて書き出すのがセオリーです。
遺伝子型を赤字で書き出してみました。A型やB型は遺伝子型が2つあるので、この時点では遺伝子型が確定せず片方は?のままにしておきます。しかし、AB型やO型は遺伝子型が確定するので記載できますね。
次に、青線で囲った部分に注目してみましょう。
12番の人は遺伝子型がOOですが、その為には両親から遺伝子Oを1つずつ受け取る必要があります。
ということは、両親は遺伝子Oを持っているはずですね。ということで、5番の人の遺伝子型はAO、6番の人の遺伝子型はBOとなります。
そうすると、13番の人の遺伝子型もわかります。6番の人から遺伝子Bを貰い、5番の人からは遺伝子Oを貰えばB型になれるので、13番の遺伝子型はBOとなります。
では次の青線に注目してみましょう。ここも同じように考えていきます。
15番の人の遺伝子型はOOですが、その為には両親から遺伝子Oを1つずつ受け取る必要があります。
ということは、両親は遺伝子Oを持っており、8番の人の遺伝子型はBO、9番の人の遺伝子型は?Oとなります。
さて、14番の人の遺伝子型はABですが、両親のどちらかから遺伝子Aを、もう片方から遺伝子Bを貰わなければいけません。しかし、8番の人は遺伝子Bを持っていませんので、9番の人が遺伝子Aを持っていることになります。従って、9番の人の遺伝子型はAO、血液型はAと確定します。
ただ、16番の人の血液型は、現時点でも分かりません。AOの遺伝子型とBOの遺伝子型の両親からは、全ての血液型の子孫が産まれる可能性があるため、どの血液型が16番に該当するかわからないからです。その代わり遺伝子型は、AO、BO、OO、ABのいずれかであることは分かります。
次の青線に行きましょう。
11番の人の遺伝子型はOOですが、その為には両親から遺伝子Oを1つずつ受け取る必要があります。
ということは、両親は遺伝子Oを持っており、3番の人の遺伝子型はAO、4番の人の遺伝子型は?Oとなります。
さて、10番の人の遺伝子型はB?ですが、両親のどちらかから遺伝子Bを貰わなければいけません。しかし、3番の人は遺伝子Bを持っていませんので、4番の人が遺伝子Aを持っていることになります。従って、4番の人の遺伝子型はBO、血液型はAと確定します。
さあ仕上げです。
7番の人の遺伝子型はOOですが、その為には両親から遺伝子Oを1つずつ受け取る必要があります。
ということは、両親は遺伝子Oを持っており、1番の人の遺伝子型はBO、2番の人の遺伝子型は?Oとなります。
さて、2番の人の遺伝子型はですが、これは確定することができません。1番と2番の子孫の6、7、8番にはA型はいませんが、これはたまたまA型が産まれていないのかもしれませんし、2番の人が遺伝子Aを持っていないからかもしれません。
ですので、2番の人については、遺伝子型はAO、BO、OOのいずれか、血液型もA型、B型、O型のいずれかとなります。
という訳で、完成した家系図がこちらです。
したがって、答えは以下のようになります。
③の考え方
4番の男性は遺伝子型BOのB型です。
つまり、遺伝子型BOの男性と遺伝子型ABの女性との子孫がどのような血液型を持つか、ということですね。
簡単に図を描いてみると一発で分かります。
ということで、解答は以下のようになります。
まとめ
とにかく丁寧に、家系図に情報を埋めていくのが鉄則です。
しっかりと解き方がわかると安定して解答できますが、慣れていないとなかなか難しいかもしれません。
同様の考え方は、伴性遺伝の問題でも使えます。
どちらも点数を分けるキー問題として扱われることも多いため、解き方を理解しておく価値は高いですよ。
伴性遺伝の問題はこちらの記事で解説しました!
それでは!