精子は精原細胞から発達した一次精母細胞が減数分裂して、卵は卵原細胞から発達した一次卵母細胞から減数分裂してできますね。
この場合に、「1つの一次精母細胞からできる精子の遺伝子型は?」と聞かれて混乱してしまう方が多いようです。
今回はこの話題を解説していきましょう。
例題
ある生物の染色体数は2n=6である。この生物1個体について考えるとき、
①乗換えが無い時、1つの一次精母細胞からできる精子の遺伝子型の種類?
②乗換えが無い時、多数の一次精母細胞からできる精子の遺伝子型の種類?
一見簡単そうですが、生物や遺伝を勉強した人ほど混乱してしまうようです。
①の考え方
この生物の精原細胞と染色体を図示するとこんな感じになりますね。
母由来(黒色)の染色体と父由来(灰色)の染色体を3本ずつ持っており、それが1本ずつセットになっていますね。相同染色体です。
この精原細胞が一次精母細胞となり、減数分裂を行うときには染色体の倍化が起こり二価染色体が形成されます。ここから第一分裂終了時につくられる二次精母細胞を考えてみましょう。
ここで気を付けてほしい点が2点あります。
1つ目は、1つの一次精母細胞が2つの二次精母細胞へ分裂するわけですが、1つの一次精母細胞からはこの4パターンのうちのどれか1パターンにしかなれないということです。
可能性としては4パターンではありますが、1つの一次精母細胞から実際に分裂してできた二次精母細胞は、このうちの1パターンであるということです。①になるなら①になる、③になるなら③になるしかないということですね。
2つ目は、横に並んだ組み合わせの一次精母細胞ができるということです。例えば、①の左側の細胞と②の右側の細胞の組み合わせ、というのはあり得ないということです。そうすると、母由来の染色体が足りませんよね。
さて、ここではこの1個の一次精母細胞は、③の分裂を行ったとしましょう。その後、二次精母細胞は第二分裂により最終的に精子を形成します。そうすると、以下のようなパターンが考えられます。
最終的に4つの精子が作られますが、その遺伝子型のパターンは2通りとなります。
これは、例えば第一分裂の際に①を選んでも②を選んでも④を選んでも、できる精子の遺伝子型は2通りになります。
②の考え方
先ほどとの違いは、一次精母細胞が1つではなく多数あるというところです。先ほどは二次精母細胞は1パターンしかできませんでしたが、今回は一次精母細胞が多数あるので全てのパターンの二次精母細胞ができます。
つまり、ある一次精母細胞は①のような分裂を、別の一次精母細胞は②のような分裂を、更に別のは③の分裂、他のは④の分裂といったような感じですね。
この①~④の4パターン、つまり8通りの二次精母細胞が出来上がります。
そこからそれぞれ精子ができるので、最終的には次の図のような感じになっていきます。
最終的には、8通りの精子ができることになります。
計算式で表すと、長い・中くらい・短い染色体それぞれについて、父親由来を取るか母親由来を取るかの2拓で考えます。ですので、
2×2×2=23=8通り
となります。
まとめ
遺伝の問題をたくさん解いて慣れている人ほど、この類の問題は難しく感じるようです。通常は多数の細胞や生物からできる配偶子の種類を数えることが多いのですが、1つの細胞からできる配偶子というのはあまり考える機会がないのかもしれませんね。
染色体の乗り換えがあるとどうなるか、ぜひ考えてみてください。このパターンも後日解説していく予定です。
それでは!