物理的・化学的防御の次に働くのが自然免疫です。自然免疫では、白血球などの食作用によって異物を取り込み、分解することにより排除します。
「とりあえず異物は喰え!」がこの自然免疫の作戦です。
以下で詳しく見ていきましょう。
物理的・化学的防御についてはこちらの記事をご覧ください。
また、免疫にかかわる白血球についてはこちらの記事でまとめています。
自然免疫とは
自然免疫は、主に免疫にかかわる細胞が直接異物や病原体に働きかけて排除する仕組みです。基本的には先天的(生まれつき)備わっている免疫になります。
異物や病原体が侵入してのち、比較的素早く働き始めるのが特徴です。やや時間がかかる獲得免疫までの時間稼ぎを担っているという側面もあります。
自然免疫の主役の細胞
自然免疫で働く白血球は、食作用を持つマクロファージ、樹状細胞、好中球が代表的なものです。またリンパ球としてNK細胞(ナチュラルキラー細胞)も参加します。
マクロファージ、樹状細胞、好中球は異物を取り込み、内部に持っている酵素により分解します。こうした機能を食作用と呼び、食作用を持つ細胞を食細胞と呼びます。
自然免疫の流れ
自然免疫の流れを順に説明していきましょう。
異物の侵入~最初の食作用
異物が体内に侵入した時、組織中のマクロファージと樹状細胞が最初に異物を感知します。マクロファージと樹状細胞は、食作用によって異物を取り込んで分解します。
この時、マクロファージと樹状細胞は、特定の異物を特定して攻撃しているわけではありません。侵入してきた異物は、こいつらが無差別に食作用によって取り込んでしまいます。
マクロファージが仲間を呼ぶ
異物や病原体を感知したマクロファージは、サイトカインという情報伝達物質を分泌します。サイトカインは粘膜下組織や結合組織に存在するマスト細胞(肥満細胞)に働きかけ、マスト細胞はヒスタミンを分泌します。
ヒスタミンによって周囲の毛細血管の血管壁が緩んで隙間ができます。すると、血液中の好中球、単球(組織中に流出した後マクロファージに分化します)、NK細胞などが血管壁を通過して組織中に流出することができるようになり、より異物に対抗する勢力が大きくなるのです。要は応援を要請しているということですね。
また、マクロファージが分泌したサイトカインは、好中球や単球、NK細胞を集合させる効果もあります。
この結果が炎症です。異物が侵入した部位では、血液量が増えて赤く腫れ、痛みを伴いますが、それはこうした反応が起きているからです。
マクロファージや好中球は、前述したとおり食作用によって異物を取り込んで分解します。食作用を行った好中球は死んでしまい、その結果膿となります。膿は好中球の死骸でできているのですね。このように膿が発生することを化膿と呼びます
更に、マクロファージはインターロイキンという成分を放出します。インターロイキンは間脳の視床下部に働き、体温を上昇させます。これが発熱です。温度が上がれば、免疫細胞がよりよく働くため、発熱を起こさせるのです。
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は感染細胞専門
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)もリンパ球の一種です。この細胞も樹状細胞やマクロファージと同様に、異物を無差別に攻撃します。
樹状細胞やマクロファージとの違いは、NK細胞は常に体内でウイルスに感染した細胞やがん細胞などを探し、それらを狙い撃ちするということです。異物そのものを攻撃する好中球や単球とは違った形で自然免疫の一翼を担っています。
樹状細胞は獲得免疫の準備を行う
さて、最初に食作用をした樹状細胞ですが、今のところ何もしていませんね(笑)。
ですがサボっているわけではなく、樹状細胞はこの後の獲得免疫を活性化させる働きがあります。異物を食作用で取り込んだ樹状細胞は、リンパ管に入り込み、リンパ節で獲得免疫を活性化させる準備を行います。
まとめ
自然免疫について解説してきました。大きく分けて以下の流れでしたね。
- 最初の攻撃
⇒マクロファージと樹状細胞が異物を食作用によって取り込む。 - 仲間を呼ぶ
⇒マクロファージが分泌したサイトカインが、
①血管壁を緩ませ隙間をつくる ②血液中の好中球、単球、NK細胞を集める - 総攻撃
⇒好中球、マクロファージ、NK細胞が異物を食作用で取り込み、排除する。 - 炎症・化膿・発熱
⇒血管壁が緩み血液が集まることで炎症が起きる。
食作用をした好中球が死んで膿になる化膿が起きる。
マクロファージが分泌したインターロイキンにより発熱して免疫細胞が活性化。
さて、これでも異物や病原体の勢いが止まらない時には、最終防衛ラインである獲得免疫(適応免疫)が働きます。これについては次の記事で詳しく説明しています。
それでは!