今回は、シャルガフの法則とその練習問題について解説していきましょう。
DNAの計算問題ではよく出てくるタイプの法則ですが、考え方を一度理解して体験しておけば大して難しいものではありません。是非解き方をマスターしていきましょう。
その他のDNAに関する計算問題はこちらをご覧ください。
例題
まずは例題をご覧ください。問い方のパターンをいくつか作ってみました。
①ある生物のDNAの塩基組成を調べたところ、グアニンの割合は26%であった。この生物のDNAにおけるチミンの割合を求めよ。
②ある生物のDNAを構成するA、T、G、Cの割合を調べたところ、GとCの合計が36%であった。また、2本鎖DNAの片方のDNA鎖について調べると、Aが24%、Cが22%であった。もう一方のDNA鎖のGの割合を求めよ。
③あるウイルスの遺伝子の塩基組成を調べたところ、アデニン、ウラシル、グアニン、シトシンから構成されており、アデニンの数とウラシルの数、グアニンの数とシトシンの数がそれぞれ一致していた。グアニンの割合は17%であった。このウイルスにおいて、アデニンの割合は何%になるか求めよ。また、このウイルスの遺伝子として適切なものを以下の選択肢から選択せよ。
(A) 1本鎖DNA (B) 2本鎖DNA (C) 1本鎖RNA (D) 2本鎖RNA
シャルガフの法則について
まずはシャルガフの法則について確認していきましょう。
「二本鎖DNAを構成する4種の塩基、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)の比が、A=Tであり、C=Gである」というのがシャルガフの法則の内容です。
言い換えると、「A:T=1:1であり、G:C=1:1である」ということです。
例えば、ある二本鎖DNAの塩基の割合を調べると、アデニンが30%であったとします。そうすると、チミンの割合も30%となるということです。
とても大事なのは、二本鎖DNAにおいてA=T,G=Cが成り立つということです。
①の解き方
特に断りが無ければ、DNAは2本鎖として考えることができ、シャルガフの法則をそのまま使用することができます。
まず、グアニンの割合は26%となっていますので、シャルガフの法則の「G=C」を使うと、シトシンの割合は26%であるとわかります。
A,T,G,Cのすべての割合を足し合わせると100%になるはずですね。ということは、「A+T+G+C=100%」となるはずです。これに、GとCのデータを当てはめていきます。
すると、「A+T+G+C=A+T+26%+26%=100%⇔A+T=48%」となります。この条件に、「A=T」という条件を加味すると、アデニンもチミンも24%となります。
よって、チミンの割合は24%です。
最も基本的な問題です。特に断りが無ければ、DNAは2本鎖であり、シャルガフの法則が成立すると仮定して解いて構いません。
②の解き方
②では、2本鎖DNAと1本鎖DNAを両方考慮しながら解いていきます。
シャルガフの法則とともに、塩基の相補性も考慮する必要があります。
この手の問題は、以下のような図を描いて整理するとぐっと考えやすくなります。1本のDNAに100個の塩基があるとし、2本鎖DNAには200個の塩基があるとしてデータを整理していきます。
まず、「GとCの合計が36%」との記載がありました。また、「2本鎖DNAの片方のDNA鎖について調べると、Aが24%、Cが22%」との記載もありましたね。つまり、片方のDNAについて、Aが24%(24個)、Cが22%(22個)です。
さらに、「GとCの合計が36%」であり、Cが22%であることから、Gが14%(14個)となり、残った40%(40個)がGであることがわかります。
ここから塩基の相補性を使って、もう一方のDNA鎖の塩基の割合を求めます。
結果、上記のように塩基の割合が求められます。
よって、もう一方のDNA鎖のCの割合は40%となります。
③の解き方
少し変化球の問題です。
「アデニンの数とウラシルの数、グアニンの数とシトシンの数がそれぞれ一致していた」という記述がポイントです。シャルガフの法則の逆で、塩基組成としてAとU、GとCの数が等しいため、これは2本鎖を構成していると判断することができます。
また、DNAであればA,T,C,Gの組み合わせですが、この問題ではA,U,C,Gの組み合わせです。つまりこのウイルスの遺伝子は二本鎖のRNAであるということも読み取れます。
ここまで読み解ければ、あとは①と同じように考えていきます。Gが17%であり、シャルガフの法則より「G=C」であるのでCも17%。残りの66%をAとUが占めており、「A=U」なので、AとUはそれぞれ33%となります。
よって、アデニンの割合は33%であり、このウイルスの遺伝子は(D) 2本鎖RNAである、となります。
まとめ
シャルガフの法則それ自体や塩基の相補性については、然程難しい概念や法則ではありません。しかし、それを使って問題を解くためには多少の練習が必要です。
特に②のような1本鎖DNAの問題については、シャルガフの法則と塩基の相補性の両方を考慮しながら解くやり方になります。これについては、一度解き方を体験しておくことがとても重要です。
自分で図を描くことも練習しつつ、解き方を復習してみてください。
それでは!