【生物基礎】免疫寛容とは? 免疫細胞の選別の仕組み

体内環境の維持
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免疫で働くT細胞やB細胞は非常に多様性に満ちています。

その多様さゆえに、たまに自己の細胞に対して免疫反応を起こしてしまうものもあります。しかし、そうすると、自分で自分の細胞を攻撃することになりよろしくないですね。

それを防ぐための仕組みが免疫寛容と呼ばれるシステムです。今回はこのシステムを詳しく解説していきましょう。

免疫細胞の特異性

T細胞の特異性

免疫で働くT細胞には、それぞれ専門があります。例えば、インフルエンザ専門のもの、ブドウ球菌専門のもの、風邪のウイルス専門のもの…といったような感じです。では、T細胞はどのように自信の専門を見分けているのでしょう?

免疫細胞にはそれぞれ専門がありますが、樹状細胞が抗原提示により提示した抗原が自身の専門であった場合には、活性化して適応免疫が発動します。

しかし、自分の専門ではなかった場合には、特に活性化することなくまたリンパ節内をフラフラしている、といった状態です。

この、「特定の抗原に対して活性化する」ことを、T細胞の特異性、といいます。

T細胞はとてもとてもとても多様である

樹状細胞が提示した抗原が、自分の専門であるかどうかを判断するために、T細胞はTCR(T-cell receptor)というタンパク質を使っています。TCRは日本語で表現すると「T細胞受容体」となります。つまり、T細胞が情報を受け取るためのもの、ということですね。

しかし、一つのTCRは一つの抗原専用です。地球上には、すさまじい種類の抗原が存在します。ということは、抗原に特異的に反応するTCR、そしてそれを持つT細胞もすさまじい種類用意する必要があります。

さて、そのように多種多様な抗原に対応できるT細胞を用意するのですが、その過程で時たま、「自分自身の細胞に反応するTCR」を持つT細胞ができてしまうことがあります。つまり、多種多様な抗原を攻撃できるように準備しているうちに、自分自身も攻撃できるようになってしまったというわけです。

T細胞に対する免疫寛容

さて、このように自分自身を攻撃してしまうT細胞ができてしまうと、何も悪くないのに自身の細胞を攻撃してしまう厄介者になってしまいますね。

そこで、このように自己の細胞に反応するT細胞は、体内から排除される仕組みが備わっています。

T細胞は胸腺で発達しますが、胸腺の上皮細胞がT細胞の選別をする役目を担っています。
胸腺上皮細胞は、適切なTCRを持っていて異物を攻撃できるかに加え、自己を攻撃しないようなT細胞であるかを選別することができます。これにより、適切なTCRを持ち、なおかつ自信を攻撃することのないT細胞だけを残すことができます。要はT細胞たちをテストにかけ、「①異物を攻撃できる」「②自分は攻撃しない」という基準で合格・不合格に振り分けているというわけです。

この仕組みによって、自己を攻撃する獲得免疫ができないようにすることを、免疫寛容と呼んでいます。

この免疫寛容により、自己を攻撃しないキラーT細胞や、自己由来の抗原提示をされてもB細胞を活性化しないヘルパーT細胞がちゃんとできるようになります。

B細胞に対する免疫寛容

B細胞が成熟する際にもこのような免疫寛容のシステムが働き、自己の細胞を攻撃する抗体(自己抗原といいます)を産生してしまうB細胞を排除することができるようになっています。これについてはいくつかのメカニズムが考えられています。

代表的なメカニズムが、骨髄においてB細胞が成熟する過程で、自己抗原を産生してしまうB細胞を除去する、もしくは不活性化するというものです。

もしも自己抗体を産生してしまうB細胞ができてしまっても、抗体を産生するためには一般的にヘルパーT細胞による制御が必要であることから、T細胞が正常であれば自己抗体が産生されることはほとんどありません。

B細胞をヘルパーT細胞が制御する内容についてはこちらをご覧ください。

まとめ

免疫寛容についてまとめました。このシステムは非常に際どいバランスから成り立っていて、このバランスが崩れると自己免疫疾患と呼ばれる類の病気に発展したりもします。自己免疫疾患をはじめとする免疫に関する病気については、こちらをご覧ください。

それでは!

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