【生物基礎】抗体の構造と多様性

体内環境の維持
この記事は約4分で読めます。

今回は体液性免疫に関連する抗体についてまとめていきましょう。

抗体の構造は、ぜひ覚えてその仕組みまで理解しておきたい内容のひとつです。それではやっていきましょう!

体液性免疫についてはこちらをご覧ください。

抗体には特異性と多様性がある

体液性免疫を解説した記事の中で、「抗原には特異性がある」ということを説明したと思います。特異性という言葉が示すのは、「対応する相手が1つに決まっており、専門であるということ」です。つまり、抗体が働く相手は1つに決まっている、ということです。それに対して、病原体由来の抗原は数百万種類以上あるといわれています。

ここで、一つの疑問が湧いてくるのではないでしょうか?すなわち、「世の中にはすさまじい数の抗原があるのだから、それに対する抗体もすさまじい種類が必要なのでは?」ということです。まさにその通りで、抗体にはそれだけの多様性をそろえるための仕組みが用意されています。

抗体の構造

抗体は、免疫グロブリンというタンパク質でできています4つのペプチド鎖でできたパーツから成る、左右対称の構造をしています。

4本あるペプチド鎖のうち2本が長く、もう2本が短くなっているのが特徴です。長いペプチド鎖をH鎖Heavy Chain)、短いペプチド鎖をL鎖Light Chain)と呼びます。このH鎖とL鎖は、ジスルフィド結合S-S結合)によって結合しています。

抗体の先端部分は、抗体の種類によってアミノ酸の配列や構造が異なっています。この先端部分を可変部と呼び、特定の抗原と結合できるようになっています。可変部以外の部分は定常部と呼びます。

抗原の多様性

抗体は可変部の構造の違いにより、無数に近い種類を実現させることができます。これは、抗体を産生するB細胞が成熟する際に、抗体遺伝子の再編成という仕組みが発動するからです。

未成熟のB細胞には、定常部の遺伝子と、将来可変部の遺伝子を作る領域が存在しています。

この中で、「将来可変部の遺伝子を作る領域」には、可変部の遺伝子の基となる遺伝子の断片が存在しています。H鎖の可変部を決定する遺伝子は、V断片D断片J断片と呼ばれる3つの断片群に分かれています。L鎖の可変部を決定する遺伝子は、V断片J断片の2つの断片群に分かれています。

B細胞が成熟する際に、この各断片群から遺伝子が1つずつ選択され、抗体遺伝子の再構成が起きることにより、かなりのバリエーションを持った抗体をつくることができるようになるのです。

H鎖のV断片には100~300種類の遺伝子が、D断片には25種類の遺伝子が、J断片には6遺伝子があるとされています。
また、L鎖のV断片には40種類の遺伝子が、J断片には5種類の遺伝子があるとされています。

そこから計算すると、H鎖の遺伝子の組み合わせは300×25×6=45000種類。L鎖の遺伝子の組み合わせは40×5=200種類。したがって組み合わせの合計は、45000×200=9000000種類にも上ります。
しかも、L鎖にはκ鎖(カッパ鎖)とλ鎖(ラムダ鎖)とよばれる2つの選択肢があるため、組み合わせの総数はさらに増えることになります。

この抗体遺伝子の再編成は、1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進氏によって発見されました。併せて覚えておきましょう。

抗体の種類

抗体には、分子量や働く場所や時期、働く対象による違いで以下に紹介する5種類が存在します。ひとまずIgGとIgEについて覚えておきましょう。

IgG

血液中に最も多い抗体の種類で、抗体の70%~75%を占めます。主に抗原の無毒化や白血球やマクロファージによる抗原抗体複合体の認識に重要な役割を果たしています。

IgM

基本のY字型構造が5個結合した形をしているのが特徴です。抗原の侵入に対して、最初に産生されるのがこのタイプです。

IgA

基本のY字型構造が2つつ結合した形をしています。血清や鼻汁、唾液、母乳、腸液などの粘膜に多く存在しています。

IgD

B細胞による抗体産生を助ける働きをするといわれていますが、正確な役割はよくわかっていません。

IgE

寄生虫に対する免疫応答やアレルギーに関与しているとされています。

まとめ

抗体の構造やその多様性について解説していきました。

抗体の多様性については、更にいくつかの多様性をもたらすための機構があることが分かっており、今現在も研究が進められている興味深い分野です。

近年、この抗体の持つ特異性を活かした医薬品の開発も進められており、関節リウマチや癌に対する治療薬が開発されたりもしていますね。

そういった側面から、医学部などの医療系学部を志望している方は抗体についてよく理解しておくとよいでしょう。

それでは!

タイトルとURLをコピーしました