今回は、ヒトの恒常性に関わるホルモンをまとめて紹介していきます。
一般的な教科書に載っている内容に加えて、医学系・薬学系などで時々出てくるホルモンも加えています。
数も多いし分泌する場所やその働きも覚えなければいけないので大変ですが、地道に暗記を積み重ねていきましょう。
ホルモンと内分泌腺
まずはホルモンとは何かについておさらいしていきます。
ホルモンとは、血液中に分泌されて標的の器官まで移動し、特定の反応を起こすための物質を指します。特徴としては、血管を通って移動すること、微量でも効果を発揮することです。
ホルモンが標的の器官まで移動すると、標的の器官にある細胞の受容体(レセプター)にホルモンが結合することにより反応を起こします。
内分泌腺とは、血液などの体液中にいろいろな物質を分泌する組織です。対になる用語に外分泌腺がありますが、これは体外にいろいろな物質(汗、涙、消化液など)を分泌する組織です。ホルモンは基本的に内分泌腺から分泌されます。
まずは一覧を
まずはホルモンのまとめの表を紹介しておきましょう。
結構多いですね…!教科書に一般的に書いてあるホルモンに加えて、大学入試に時たま出て来るホルモンも付け加えさせて頂きました。特に医学系や薬学系を目指す場合はチェックしておきましょう。
まずは太字で書かれているホルモンについて覚え、その後細字のホルモンについてもつけ足していくのがいいかなと思います。
それでは、個々のホルモンについて簡単に説明していきます。
放出ホルモン、抑制ホルモン
放出ホルモン、抑制ホルモンは、間脳視床下部から分泌されるホルモンです。
脳下垂体からのホルモンの分泌を促進したり抑制したりする働きを有しています。
実は、脳下垂体からどのようなホルモンを分泌するかによって、この放出ホルモンや抑制ホルモンはさらに細かく分類分けがなされます…が、現時点ではそこまでは覚えなくても大丈夫です。
一応羅列しますと以下の通りです。
- 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン
- 成長ホルモン放出ホルモン
- 成長ホルモン抑制ホルモン
- 性腺刺激ホルモン放出ホルモン
- プロラクチン放出因子
- プロラクチン抑制因子
- 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン
成長ホルモン
成長ホルモンは、脳下垂体前葉から分泌されるホルモンです。
その名の通り、体の成長を促進するホルモンです。タンパク質の合成を促進して筋肉を成長させたり、骨の発育を促進したりします。
また、代謝をコントロールする作用も有しています。例えば、炭水化物、タンパク質、脂質の代謝を促進します。
肝臓でのグリコーゲン分解を促して血糖値を上昇させる作用も有しています。
甲状腺刺激ホルモン
甲状腺刺激ホルモンは、脳下垂体前葉から分泌されるホルモンです。
その名の通り、甲状腺を刺激してそこからのホルモン分泌を促進するホルモンです。
甲状腺の発育を促す効果も有しています。
副腎皮質刺激ホルモン
副腎皮質刺激ホルモンは、脳下垂体前葉から分泌されるホルモンです。
その名の通り、副腎皮質を刺激してそこからのホルモン分泌を促進するホルモンです。
副腎皮質の発育を促す効果も有しています。
ろ胞刺激ホルモン
ろ胞刺激ホルモンは、脳下垂体前葉から分泌されるホルモンです。別名、卵胞刺激ホルモンとも言います。
その名の通り、ろ胞を刺激してそこからのホルモン分泌を促進するホルモンです。ろ胞は卵胞ともいうのですが、ラン藻にある卵子を含んだ球状の細胞の集合体のことです。
ろ胞の成熟を促す効果も有しています。
また男性でも、ろ胞刺激ホルモンは分泌されています。精巣の成熟を促す効果を有しています。
黄体刺激ホルモン
黄体刺激ホルモンは、脳下垂体前葉から分泌されるホルモンです。
その名の通り、黄体を刺激してそこからのホルモン分泌を促進するホルモンです。黄体は卵巣内の構造で、排卵によって成熟した卵子が放出された後に発達するところです。
このホルモンは黄体の成熟を促す効果も有しています。
プロラクチン
プロラクチンは、脳下垂体前葉から分泌されるホルモンです。
主に乳腺の発達や、母乳(乳汁)の合成と分泌を促進するホルモンです。
また、黄体のプロゲステロンの分泌を維持させることにより排卵を抑え、妊娠状態を維持する効果も有しています。
バソプレシン
バソプレシンは、脳下垂体後葉から分泌されるホルモンです。
主に腎臓での水の再吸収を増加させることにより、尿量を下げる効果を持つホルモンです。脱水時などに体液を保持する役割ですね。このような作用から、抗利尿ホルモンという別名もあります。
また、血管を収縮させて血圧をあげる効果もあります。
バソプレシンの名前の由来はVaso(管)+ press(圧迫)+ in です。つまり、「管を圧迫させるもの」=「血管を収縮させるもの」ということですね。
チロキシン
チロキシンは、甲状腺から分泌されるホルモンです。
体内の様々な物質代謝を促進するホルモンです。言葉にすると一言で済んでしまうのですが、かなり広範囲にわたって影響を及ぼすホルモンです。
ちなみに甲状腺の働きが必要以上に活発化し、チロキシンが過剰になるとバセドウ病という病気になります。
カルシトニン
カルシトニンは、甲状腺から分泌されるホルモンです。
とは言え、ヒトでは甲状腺以外からも産生されることが知られています。
骨からのカルシウムの放出を抑制し、骨へのカルシウムとリン酸の沈着を促進する作用があります。つまり、血中のカルシウム濃度を下げ、骨の形成を促進するという効果ですね。
血中のカルシウム濃度が低下すると、カルシトニンの分泌が抑制されます(負のフィードバック)。
パラトルモン
パラトルモンは、副甲状腺から分泌されるホルモンです。
カルシトニンとは逆に、血中のカルシウム濃度を増加させ、骨からのカルシウムの溶出を促進するホルモンです。
カルシトニンとパラトルモンが、血中のカルシウム濃度を調節し、骨の形成をコントロールしているといえるでしょう。合わせて押さえておきましょう。
血中のカルシウム濃度が増加すると、副甲状腺のカルシウム受容体が反応し、パラトルモンの分泌が抑制されます(負のフィードバック)。
糖質コルチコイド
糖質コルチコイドは、副腎皮質から分泌されるホルモンです。
タンパク質を糖に変換して、血糖値を上昇させるホルモンです。
実はグルカゴンやアドレナリンの働きをコントロールする働きも有しています。糖質コルチコイドが無いと、これらのホルモンの働きが起きないことが分かっています。
また、糖質コルチコイドはステロイドホルモンの一種です。ステロイドについてはこちらの記事をどうぞ。
鉱質コルチコイド
鉱質コルチコイドは、副腎皮質から分泌されるホルモンです。
腎臓でのナトリウムの再吸収、カリウムの排出を促進させるホルモンです。これにより、水分の再吸収や血圧上昇を結果として引き起こします。
鉱質コルチコイドもステロイドホルモンの一種です。ステロイドについてはこちらの記事をどうぞ。
アドレナリン
アドレナリンは、副腎髄質から分泌されるホルモンです。
主にグリコーゲンをグルコースに分解することで血糖値を上昇させるホルモンです。
また、ストレスに反応し交感神経が興奮した状態で分泌されるホルモンでもあり、心拍数や血圧をあげたり瞳孔を開いたりする効果も有します。「闘争か逃走か」や「戦うか逃げるか」反応として有名ですね。
グルカゴン
グルカゴンは、すい臓ランゲルハンス島A細胞から分泌されるホルモンです。
主に肝臓の肝細胞に働きかけ、グリコーゲンをグルコースに分解することで血糖値を上昇させるホルモンです。また、アミノ酸からの糖新生も促進します。
血糖値を上昇させる主要な役割を担うホルモンとして知られています。
低血糖状態あるいはタンパク質を摂取することによって分泌が誘発され、逆に炭水化物や砂糖を摂取して高血糖状態になると分泌は抑制されます。
インスリン
インスリンは、すい臓ランゲルハンス島B細胞から分泌されるホルモンです。
主にグルコースからグリコーゲンを合成することで血糖値を低下させるホルモンです。
血糖値を上昇させるホルモンはいくつかありますが、血糖値を低下させるホルモンはインスリンしかありません。
人類が進化する過程では、基本的には食糧が不足して血糖値が低くなってしまうことの方が多く、血糖値が高い状態であることは少なかったと考えられています。その為、血糖値を上げる手段を複数発達させたのに対し、血糖値を下げる手段はあまり発達しなかったものと考えられています。
エストロゲン
エストロゲンは、卵巣のろ胞から分泌されるホルモンです。その他、副腎皮質や精巣でも作られますが、メインは卵巣のろ胞としておいてよいでしょう。
主に生殖器や子宮の発育を担うホルモンです。
更に、排卵の促進と子宮収縮の促進にもかかわっている他、極めて多岐にわたる働きがあり、いまでもその解明が進められているホルモンです。
エストロゲンもステロイドホルモンの一種です。ステロイドについてはこちらの記事をどうぞ。
プロゲステロン
プロゲステロンは、卵巣の黄体から分泌されるホルモンです。
主に排卵の抑制や子宮収縮の抑制を担い、月経の周期を決めたり妊娠を維持させるような作用を持つホルモンです。
排卵後、黄体の発達とともにプロゲステロンの分泌量が増加し、受精卵が着床しやすくするようにしています。また、月経における基礎体温の高温相はプロゲステロンの作用によって起こります。
プロゲステロンもステロイドホルモンの一種です。ステロイドについてはこちらの記事をどうぞ。
アンドロゲン
アンドロゲンは、精巣から分泌されるホルモンです。女性では卵巣で産生されます。
雄の生殖器の発育を促進する作用があります。また、卵巣で産生されたアンドロゲンは女性ホルモンであるエストロゲンに変換されます。
アンドロゲンは、テストステロンやアンドロステンジオンといったステロイドホルモンの総称です。ステロイドについてはこちらの記事をどうぞ。
まとめ
多くの高校生や受験生にとって一つの鬼門ともいえるホルモン。地道にコツコツ覚えていくことが重要です。頑張りましょう!
血糖値の調節や性周期の調節などについては、また別の記事で詳しく解説していく予定です。
それでは!